てぃーだブログ › 僕らはみんな、豚を飼う! › 沖縄型・回分式酸化溝

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2006年01月09日

「沖縄型・回分式酸化溝」を見に行く!

先日、ミナミ君と一緒に、
沖縄型・回分式酸化溝(かいぶんしきさんかみぞ)を見に行きました。

沖縄型・回分式酸化溝というのは沖縄大学名誉教授の宇井純先生が開発した、
ローコストでの設置が可能で、メンテナンスも非常に楽な、 自然循環型の畜産廃水処理システムです。

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『沖縄型・回分式酸化溝のすすめ~自然循環型の畜舎排水処理システム~』
著者:宇井純  編集:真喜志好一、内海正三  
発行:沖縄環境ネットワーク  TEL&FAX 098-832-8484

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畜糞を活かした循環型農業を勉強中のミナミ君が、
「沖縄にいる間にどうしても実物を見てみたい!」
ということで、ブックレットを発行した沖縄環境ネットワークにお願いしましたところ、
何と、開発と普及に関わっておられる建築家の真喜志好一さんご本人に、
設置している農家を案内していただきました!



ここでちょっと説明。

酸化溝」とは、
空気を吹き込んで(ばっ気という)、好気性菌によって有機物を分解する槽、池のこと。
回分式」とは、
ひとつの処理槽で「ばっ気」と「沈殿」をくり返すこと方法のこと。
いくつもの処理槽を必要とする「連続式」にくらべて、設置費用を安く抑えられる。

微生物によって汚泥を処理することを「活性汚泥法」といいますが、
好気と嫌気、両方の菌を時間差(間欠式、断続式とも)で活性化させることで、
ひとつの槽での処理を可能にしています。

沖縄型・回分式酸化溝の特徴は、、、

 1.ひとつの池を作るだけだから安くできる。
 2.ややこしい機械装置をつけないので、管理がしやすく、維持費が安い。
 3.豚舎から出る排水をそのまま処理できる。


 「基本的にコンクリートで池を作り、電気を引き、水車を回すだけです。
 浄化槽メーカーが作る処理層は、たくさんの機械がついていて、建設費も維持費もかかります。
 沖縄型・回分式酸化溝はこれに比べてはるかに安く作れて、自分で運転し、管理することができます。
 比較するメーカーによって異なりますが、費用負担は10分の1以下になる場合もあります」



今回、見せていただいた金城さん(大里村、今年から八重瀬町)の場合は、
家族で手作りし、かかった費用は150万~170万円。
企業にまかせたら、3倍近くかかる」そうです。

金城さんは、養豚(繁殖)と肉牛生産の他、サトウキビや野菜も作っていて、
処理後の上ずみ液は、3日に1度抜いて水肥として利用し、
余剰汚泥(底に沈殿したもの)は年に3、4回抜くだけ、それも畑に撒ける。

以前は、糞をそのまま畑に撒いていましたが、窒素過多で不満足な生産をしていました。
しかし、宇井先生とのご縁により浄化槽を作り、水肥をつかってみたら成長もよく、
年3回出荷していたレタスが、年5回もの出荷に成功したことも。
悪臭もなく、安心して使用することができます




写真は、水車を回して「ばっ気」中の処理槽。

ちょっと詳しく説明すると、、、

ばっ気中は、好気性菌(酸素が好きなバクテリア)が有機物を分解する。つまり、糞尿に含まれる窒素(N)が菌体に取り込まれ、アンモニア(NH3)に。アンモニアはアンモニア酸化菌によって亜硝酸(NO2)に、さらに硝酸菌によって硝酸(NO3)になる。
水車を止めて沈殿させた時は、嫌気性菌が活発になり有機物を分解する。つまり、窒素に結びついた酸素を取り込む脱窒菌によって硝酸(NO3)が分解され、窒素ガス(N2)だけになって、空気中に放出される。


長くなったので、続きはまた次回!

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参考までに、、、

1.沖縄大学、宇井先生のHP

2.琉球新報 2001年7月31日「論壇」より

 「この酸化溝は、沖縄大学宇井純教授が三十二年前にオランダに留学し、酸化溝の発明者である細菌学学者パスフィーア博士に学び長年研究を重ねてこられた処理方法で、低コスト、簡単、しかも悪臭が除去でき、有機物と窒素が90%以上除去できる浄化方法である。
 私自身、研究を始めるまでは、汚水のにおいがなくなり、窒素が除去されることなど半信半疑であったが、水質分析をしていくうちに、BODや窒素の除去率が高く、においがとれていることに驚いた。
 分析結果から、河川などの公共水域に放流することが可能となり、また沖縄など水不足が問題の地域において、処理水は有効な水資源となり、農地に散布し液肥として利用でき、豚舎などを清掃する水として再利用できる。
 現在、本島離島を含め数カ所に普及しており、環境改善に役立っていくことになるだろう」
(金城由美子・沖縄大学地域研究所特別研究員)


3.長崎県の設置例(長崎県中央家畜保健衛生所HP

 「大村市では、2戸の養豚農家が周辺の耕種農家と共同で「長崎県家畜ふん尿処理施設緊急整備事業」により尿処理施設(液肥処理施設)を整備しています。
 施設の処理方式は、酸化溝型回分式活性汚泥法(いわゆる沖縄方式)で、簡易な構造と低ランニングコストが大きな特徴です。
 構造が簡易であるため、関係機関の指導により農家自ら処理の設計に取り組み、施設の設置費を大幅に削減しています。
 施設は稼働を開始したばかりですが、この方式が県下でも初めての事例であることから、関係者から大きな期待と関心が寄せられています。
 当所としても、大村市、県央農業改良普及センター等と連携し、尿の処理が順調に行われるように定期的な水質の検査などを継続していくことにしています」

4.平成11年度地球環境基金の助成による設置例の報告
http://www.erca.go.jp/jfge/subsidy/organization/act_repo/report11/PAGES/a_123.html
 活動の概要
 沖縄県中南部の河川は、ほとんどが有機汚染で真っ黒になり、悪臭を放ち、何の用途にも使えなくなっている。しばしば河川水でBOD200mg/lを超える値が観測され、それまで中南部の飲料水として使われた地下水にも汚染が及び、飲料水はすべて北部のダムから運ばれる県営水道に一元化された。この汚染の原因は沖縄県公害防止条例で畜産業の保護のため、ほとんど処理を要しない高濃度の排水基準を設定し、事実上畜産排水は無処理で河川に放流されている事が原因である。たしかに沖縄県の畜産業は経営が弱体であり、経営に負担をかけないような経済的な処理法を実現することは重要であろう。
 沖縄環境ネットワークが、1998年に沖縄県農林部長に、今帰仁村にある県畜産試験場で畜舎排水を処理するパイロットプラントを建設するよう提案したところ、子豚を含めて繁殖豚舎100頭分の屎尿を処理するプラントを試験場研究員らで自作して、’99年1月から浄化処理プラントの運転を始めた。’99年4月にはほぼ順調に運転されていることを水質等から確かめ、その結果を一般に公開したところ多数の見学者があり、何人かの畜産農家がその簡単な構造と低い建設コストに強い関心を示した。
 この結果を参考に沖縄県南部にある畜産排水で高度に汚染された雄樋川を浄化する計画を始動した。その第一歩として雄樋川上流にあたる大里村字大城の金城寿助氏の畜舎から排出される豚100頭の排水を処理する回分式活性汚泥法(酸化溝)の浄化槽を設計し建設することになった。浄化槽の建設は金城氏に依頼し、家族総出で建設を始めるに至った。この浄化槽の建設着工は1999年7月15日、完成は8月10日である。曝気用水車は9月20日に設置し同日より運転を開始し今日に至っている。
 運転開始後1ケ月間は連続運転し、2ケ月目からは回分式にて運転している。水質検査は11月より、ほぼ月1回のペースで定期的に測定を行っていて、運転から6ケ月の成績はおおむね予想よりも良好で、約10000mg/lのBODと2000mg/lの全窒素の原水が、処理水になるとBODが100mg/l 前後、全窒素が30mg/l前後まで処理されている。農家ではこの処理水を野菜畑に肥料として利用しており、良好な成果を得ているという。回分式活性汚泥法としての酸化溝は、こうして我々の実験によって、BOD10,000mg/l程度の高濃度の畜産排水を有効に処理できることがわかった。窒素の除去もBOD/窒素の比が適切であれば何層かの附加施設を要することなく可能である。
 この成功を見た平良市と宮古水道企業団は、水道水源となっている地区にある4戸の畜産排水をこの方法で処理する計画を2000年度に実現しようとしている。一方大里村からは我々の研究グループに対して、雄樋川流域の牛舎の排水を同様な方法で処理できないか、研究を依頼してきているので、2000年度は牛の排水処理実験に取りかかることになろう。牛の排水は尿の量が大きいこと、糞は堆肥等の別利用が多いので脱硝のための有機物をどのように供給するかが課題である。
 本来我々人間の生屎尿もこの方法で処理できたはずである。曝気槽内のMLSSを大きくとり、F/M比を小さくすれば畜産排水や生屎尿のような悪臭の濃い排水でも全くにおいのない状態で処理できることがわかっている。また、今後地下水中の硝酸態窒素の増大が問題になることが予想されるだけに、脱硝工程が容易に出来るか否かは今後重要になるであろう。一方で生下水や雑排水のような、BOD100mg/lの桁の処理法として回分式活性汚泥法は有効であり、我々も機会が有ればこの方法を下水処理にも適用したい。 (助成額 3,100千円)
団体所在地
〒902-8521 沖縄県那覇市国場555
沖縄大学宇井研究室 TEL 098-832-2962 FAX 098-832-2962  


Posted by mkat at 21:25Comments(3)